大阪高等裁判所 昭和30年(く)26号 決定 1955年9月27日
本籍 大阪市○○区○○町○丁目○○番地
住居 布施市○○○○丁目○番地○○方
少年 ゴム会社工員 草野繁(仮名) 昭和一二年一二月二一日生
抗告人 実毋及び義父
主文
本件各抗告を棄却する
理由
本件各抗告申立理由の要旨は本人は観護措置中増田某と知合になり、同人にそそのかされて本件非行をしたのであるから少年院に入ればまた新たな知合が出来るやも知れずと思われ、寒心に堪えないばかりでなく、一度少年院え行つたという英雄的心理の害が心配である。現在本人は真面目に働いて居り、これまで抗告人と一緒に仕事をしていたときには一度も過誤を犯していないから、今一度家庭において本人を更生させたいというのであつて、結局原決定の処分が著しく不当であることを主張するに帰着する。しかし保護処分決定に対し抗告を申立てることのできる者は、少年本人その法定代理人または附添人に限られ、それ以外の者は抗告を申立てることができないのである。(少年法第三二条本文)ところが抗告人芦田友治は少年の実毋芦田八重子の夫であるが少年の義父であり法律上少年との間に親子干係なく、従つてその法定代理人でないから同人の抗告申立は巳にその点において許されないのである。また一件記録に徴し、明らかな本件非行の罪質、態様、回数、本人の性格交友干係家庭環境過去二回に亘る試験観察の結果等から考察すると、抗告人等に本人を監督する熱意のあることは看取できるが、少年を在宅のまま保護監督するだけでは到底成果を期待することができず、却て教育の時機を失するおそれさえあるように認められるからこの際中等少年院に送致して、積極的に矯正教育を施すのか寧ろ本人の将来のため利益といえよう。そうだとすればこれと同一見解に立つ原決定の処分はまことに相当であつて、これを不当処分とする本件各抗告は理由がない。
よつて少年法第三三条第一項に従い主文のとおり決定する。
(裁判長判事 吉田正雄 判事 山崎寅之助 判事 大西和夫)